「なぁんだ、こんなことで良かったんだ」
ホッとしてそう呟いたときだった。

不意にあの音楽が聞こえてきて私は動きを止めた。
サッと一気に血の気が引いていくのを感じる。

「おい、冗談だろ……」
問題解決だと言っていた竜二も青ざめる。

みんなの視線がグラウンドへと注がれた。
そこにはピエロがカラカラ音を立ててタイヤを回転させていたのだ。

「もう出てこないんじゃないのかよ!」
竜二がバッドを構えて叫ぶ。

その声は風に乗ってかき消され、誰の耳にも届かない。
ついさっきまでグラウンドを歩いていた先生にすら、届かない。