「健太から昨日の話を聞いて、自分1人だけで逃げてずるいことしたなって、思ったの。それに、千夏に冷たくしちゃったし」

昨日のことを本当に後悔しているみたいで、下唇を噛み締めている。

「綾はなにも間違ったことなんてしてないよ? 私だって、あんな目にあったら逃げたくなっちゃう。逃げ場があるなら逃げるのは普通のことだよ?」

ピエロが目の前にいてナイフを振り上げたとき、私はもうdマエだと思って諦めてしまった。
竜二の助けがなければ、きっと綾と同じように怪我をしていただろう。

怪我をしなかっただけで、そこまでの恐怖心はちゃんと理解できたつもりだった。
「ありがとう千夏。でも、もう逃げないから。私も一緒に戦いたい」

その目には強い意思を感じられて、胸の奥がジンッと熱くなった。