飯島。
それはピエロの背中に書かれていた名前だった。

これがピエロと無関係なはずがなかった。
案の定。ピエロは飯島という名前に反応してすぐさま方向転換してこちらへ向いた。

そして今までに見たことのない速度で近づいてくる。
うまく逃げるつもりが一瞬出遅れてしまった。

木陰から出たときにはすでにピエロが目の前まできていたのだ。
飯島という名前でこれほど反応するとは思わなかった。

ピエロが音楽を奏でながらジリジリと距離を詰めてくる。
まるでネズミをいたぶっている猫みたいだ。

ピエロがナイフを握りしめた手を空中へと持ち上げていく。
逃げ道もなく、もう終わりだ……。

そう思って目を閉じたときだった。
「こっちだ!」