わざとピエロへ向けて声をかけ、1人で竜二たちとは逆方向へと走り出した。
ピエロはギシギシとタイヤを軋ませながら無理やり方向転換している。

やった!
うまく行った!

ピエロは方向転換するときに時間がかかるから、その間に私は足の速度を早めた。
そして木陰へと身を隠すことに成功したのだ。

ピエロは目標物を見失ってその場で動きを止めた。
が、それもほんの束の間のことだった。

ピエロはすぐに竜二と健太の方へ体の向きを変えたのだ。
隠れていなかったふたりはあっという間にピエロと距離が縮まってしまう!

「い、飯島!!」
木陰から顔を出して私は叫んでいた。