「泣くなよ、千夏らしくない」
横に立ち、私の背中をポンッと叩く。

「泣いてないよ」
「本当かよ」

カラカラと明るい声で笑う竜二に心が少しだけ軽くなる気がした。
「今日の放課後もピエロが出てくると思うか?」

「わからない。でも、来るかもしれないよね」
もしそうなったら、今度は全力で綾を守る。

もう絶対に怪我をさせたりなんかしない。
「もし出てきても、俺が一緒にいる。1人で解決しようとするなよ」

「……うん。ありがとう」
竜二の優しさがくすぐったくて顔をうつむける。

1人じゃない。
そう伝えてくれるように竜二が強く手を握りしめてくれたのだった。