私は呟いて笑う。
あの危険なピエロにも、ちゃんと愛称があったんだ。

「トンちゃん。トンちゃん。あぁ、会いに来てくれたのね」
足元までやってきたピエロを美月ちゃんが抱き上げる。

ピエロはおとなしくされるがままだ。
美月ちゃんの目には大粒の涙が光っている。

「私が中学校の頃、ラントンワールドに連れて行ってもらって買ってもらったトンちゃん。あぁ、懐かしい。大好きよトンちゃん」

ラントンワールドという遊園地名に私達は目を見かわせた。
その遊園地は今でもまだ運営されていて、県内では有名なテーマパークだった。

「ラントンワールドに行けばあのピエロが沢山いるのか」