そのとき、カラカラと音を立ててピエロが動き出した。
一瞬身構えたけれど、ピエロはもう武器を持っていない。

それに、目の前にずっと会いたかった人がいる。
ピエロは振り向かずまっすぐに美月ちゃんへ向けて進んでいく。

カラカラと安っぽいタイヤを動かして、音楽を鳴らして進んでいく。
途中で美月ちゃんがその音楽に気がついて視線を向けた。

そして大きく目が見開かれた。
「トンちゃん!?」

美月ちゃんのしゃがれ声にピエロの動きが早くなる。
まるで一刻でも早く美月ちゃんに抱きつきたいとでもいうように。

「トンちゃんだって」