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それから1時間ほど歩いてたどり着いたのは丘の上に経つこじんまりとした老人ホームだった。

その手前まで来て立ち止まり、カバンの中からピエロを取り出す。
健太が手際よくピエロの胴体とタイヤをくっつけて、その場におろした。

その瞬間、今まで聞こえてこなかった喧騒が戻ってきていた。
鳥のさえずりや、遠くからは車の走る音も聞こえてくる。

「戻った……」
私が呟いたとき、ホームの庭園を1人の女性が車椅子で散歩している姿が見えた。

その顔は映像でみた老婦人によく似ている。
あれが美月ちゃんだ!