老人ホームまでの案内人は綾だった。
綾は足取りもしっかりしていて、すごく大きくなったように見えた。

「結構遠いんだね」

綾の隣を歩きながら聞くと「そうだね。いつもはお父さんの車で20分くらいかかってるから」と、言われた。

徒歩だと1時間くらいはかかりそうだ。
街を歩いていても誰の姿も見えないし、動物の鳴き声も聞こえてこない。

そんな異様な空間にいても今はなぜか心が澄んでいた。
ピエロの気持ちが治まってくれればそれでいいという気持ちがしている。

「私も小学校の頃から大切にしているうさぎのぬいぐるみがあるの」