老婆はふたりの職員に支えられながら車へと入ってく。
次に玄関先に準備されていたらしい、荷物がどんどん車に運び込まれていく。

その様子を見ていたとき、ふと二階の窓から視線を感じて私は顔を向けた。
窓の向こうは出窓になっていて、そこにピエロの人形がいることにきがついた。

人形はこちらを向いてジッと老婆を見つめているように見える。
車が発進してからは目の前に季節が目まぐるしく変化して行った。

夏が来て、冬が来て、また夏が来て。
四季がめぐる度に家は荒れ果ててゆく。

そして何人もの若者たちが窓を割り、勝手に家の中へ侵入していくのを見た。

最初のころはただ空き家に入り込むだけだったが、やがて彼らは悲鳴を上げて逃げ出すようになった。

『ピ、ピエロが動いてる!』
『本物の幽霊屋敷だ!』