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綾がトイレから似で出す音を聞きながら、私はピエロと向き合っていた。
ピエロは勝ち誇ったような笑みを浮かべて音楽を鳴らしている。

個室のドアとピエロとの間に隙間はほとんどなくて、私が逃げ出す空きはない。
ピエロが徐々に近づいてきてナイフを振り上げる。

そのとき、私は後手でトイレの水を流していた。
ジャーと大きな音と共にタンク上についている手洗い水も流れ出す。

片手で水をすくうとそれをピエロめがけてふりかけた。
ピエロは一瞬たじろぎ、すきができた。

今だ!
ピエロの体を押しのけた瞬間、ピエロの持っていたナイフが私の手の甲に当たって痛みが走る。

だけど気にしている場合じゃなかった。
私はなかなか動き出さないピエロを尻目にトイレから脱出したのだった。