健太が綾に駆け寄ろうとするけれど、距離が開いていて時間がかかる。
このままじゃ全員がピエロの餌食になる……!

「綾、こっち!」
咄嗟に綾に駆け寄った私はその手を握りしめて強引に引き立たせた。

そして近くのトイレに駆け込む。
その様子を確認していた竜二がそのまま廊下を奥へと走っていくのが見えた。

「綾、大丈夫?」
トイレの個室にふたりで入って鍵をかける。

「ご、ごめん……。私は大丈夫だよ」
コケて少しヒザを擦りむいているけれど、血も出ていないし本当に大丈夫そうだ。

「よかった」
「でも千夏は? 足が痛むんでしょう?」