「嘘だろ。誤作動だとしても千夏の家からここまで来られるわけがない。だいたい、部屋のドアや玄関はどう突破したんだ?」

健太が顎に指先を当てて考え込んでしまった。
だけどいくら考えたって答えは見つからない。

これはありえないことなんだから。
私は自分の頬を自分の指でつねってみた。

ちゃんと痛い。
やっぱり、昨日のあれも夢じゃなかったんだ!

「ね、ねぇ、逃げたほうがいいかも」
ピエロはサッカーボールのところから動いていない。

だけどナイフをもっているのだ。
あんなの、古物市で購入したときには持っていなかったのに。

「大丈夫だって。ただの人形だろ?」
竜二が軽い口調で言ってピエロに近づいていく。

ピエロの首がギギッと動いて竜二へと向けられた。