席に座り、ちらりと前を見る。
ドッ、と心臓が嫌な音を立てた。
前には男の子が座っていた。桃花高校の校章がついているため、同じ高校であることは間違いない。
いや、そこまでは構わない。問題は…。
その人は、中学のクラスメイトだったのだ。
な、んで。わざわざ、知り合いがいないところを選んだのに。
正直、この人との関わりはほとんど無いに等しかった。
クラスメイトだから、名前と顔を覚えていただけで。だから、何も気にしなくていい。気にしなくて、いいんだ。
そう必死に考えるも、動機が止まらなかった。
そう、きっと相手は分からない。あんなに地味だった奴なんて、覚えていない。
男の子が突然立ち上がった。
思わずビク、と肩が跳ねてしまう。
「…ねぇ。」
「っはい?!」
急に声をかけられ、うわずった返事を返してしまう。
「小野寺茜さん、だよね?わ、同じ高校だったんだ。」
完全にバレている。なんならフルネーム把握済み。どうしよう、馬鹿に、されてしまうかもしれない。お前みたいな地味なやつがって。
「俺のこと、覚えてる?同じクラスだったと思うんだけど…。」
「あっ、えっと、はい、覚えてます、北条真斗くん、ですよね…?」
どうしても敬語が抜けない。同い年なのに。そんな自分に、少しだけ腹が立つ。なーんだ、全然成長していないじゃないか、と。
それに、彼のことを忘れるわけがない。彼は一目見たら忘れないほどの美形なのだ。
アーモンド型の瞳、シュッと通った鼻、薄い唇、サラサラな髪───。
ついたあだ名は、「王子様」。
皆に平等で、人当たりのいい性格。困っている人を放っておけない優しい心の持ち主。でも決して特定の彼女は作らない。
クラスの女子がこぞって告白して、そして玉砕していった。
間違いなく、クラスで、いや、学校で一番モテていたであろう人物が、なんでこんな所に…。
「小野寺さん、変わったね。すごく可愛くなってる。」
「っな?!」
罵詈雑言を覚悟していた私に、変化球が刺さった。可愛い…?私が…?!
ポカーンと間抜けな顔をしているであろう私をよそに、北条くんは続ける。
「めっちゃ可愛くなっててびっくりしちゃった。元々素材は良かったから顔隠しちゃうのもったいないなって思ってたから。」
「え、あ、う、ありがと、あの、そんなに言わなくても…。」
追い詰められていく感覚がする。きっと、私の顔はゆでだこのように真っ赤だろう。
逃げ出したい、今すぐにこの空間から。というか、どうにかして別々に学校に行きたい。
どうしよう、どんな方法が、うーん…
必死に頭を回す私に、
「ねぇ、小野寺さん。」
と声がかかる。
パッと顔をあげると北条くんが満面の笑みでこちらを見ていた。
「…ど、どうしたんですか…?」
なんだか、すごく嫌な予感が…。
すると、北条くんは、笑みを崩さずに、一言。
「学校、一緒に行ってくれないかな?」
「え、あ、えーっと、その…」
考えていた計画が、全てバッサリと切られるような、そんな感覚がした。
ドッ、と心臓が嫌な音を立てた。
前には男の子が座っていた。桃花高校の校章がついているため、同じ高校であることは間違いない。
いや、そこまでは構わない。問題は…。
その人は、中学のクラスメイトだったのだ。
な、んで。わざわざ、知り合いがいないところを選んだのに。
正直、この人との関わりはほとんど無いに等しかった。
クラスメイトだから、名前と顔を覚えていただけで。だから、何も気にしなくていい。気にしなくて、いいんだ。
そう必死に考えるも、動機が止まらなかった。
そう、きっと相手は分からない。あんなに地味だった奴なんて、覚えていない。
男の子が突然立ち上がった。
思わずビク、と肩が跳ねてしまう。
「…ねぇ。」
「っはい?!」
急に声をかけられ、うわずった返事を返してしまう。
「小野寺茜さん、だよね?わ、同じ高校だったんだ。」
完全にバレている。なんならフルネーム把握済み。どうしよう、馬鹿に、されてしまうかもしれない。お前みたいな地味なやつがって。
「俺のこと、覚えてる?同じクラスだったと思うんだけど…。」
「あっ、えっと、はい、覚えてます、北条真斗くん、ですよね…?」
どうしても敬語が抜けない。同い年なのに。そんな自分に、少しだけ腹が立つ。なーんだ、全然成長していないじゃないか、と。
それに、彼のことを忘れるわけがない。彼は一目見たら忘れないほどの美形なのだ。
アーモンド型の瞳、シュッと通った鼻、薄い唇、サラサラな髪───。
ついたあだ名は、「王子様」。
皆に平等で、人当たりのいい性格。困っている人を放っておけない優しい心の持ち主。でも決して特定の彼女は作らない。
クラスの女子がこぞって告白して、そして玉砕していった。
間違いなく、クラスで、いや、学校で一番モテていたであろう人物が、なんでこんな所に…。
「小野寺さん、変わったね。すごく可愛くなってる。」
「っな?!」
罵詈雑言を覚悟していた私に、変化球が刺さった。可愛い…?私が…?!
ポカーンと間抜けな顔をしているであろう私をよそに、北条くんは続ける。
「めっちゃ可愛くなっててびっくりしちゃった。元々素材は良かったから顔隠しちゃうのもったいないなって思ってたから。」
「え、あ、う、ありがと、あの、そんなに言わなくても…。」
追い詰められていく感覚がする。きっと、私の顔はゆでだこのように真っ赤だろう。
逃げ出したい、今すぐにこの空間から。というか、どうにかして別々に学校に行きたい。
どうしよう、どんな方法が、うーん…
必死に頭を回す私に、
「ねぇ、小野寺さん。」
と声がかかる。
パッと顔をあげると北条くんが満面の笑みでこちらを見ていた。
「…ど、どうしたんですか…?」
なんだか、すごく嫌な予感が…。
すると、北条くんは、笑みを崩さずに、一言。
「学校、一緒に行ってくれないかな?」
「え、あ、えーっと、その…」
考えていた計画が、全てバッサリと切られるような、そんな感覚がした。