「〜〜〜。それじゃあみんな、気をつけて帰るんだぞー!」

先生のその言葉で、教室が一気に騒がしくなる。

「茜!帰り何?」

鞄を持って昇降口へ行こうとすると凪にそう聞かれた。

「私電車!〇〇駅で降りてる〜!」

「マジか、私バス通なんだよね…。帰りはバラバラかぁ…。」

「そっかぁ…。」

帰りは一緒じゃないのか…。ちょっと…いや、結構残念。

と、どうやらそんな考えが思いっきり顔に出ていたらしく。

「っあはは!そんな寂しそうな顔すんなよ〜」

と歩きながら凪に背中をバンバンと叩かれた。

え。

「そんな顔してた?」

「んー、捨てられた子犬みたいな顔だった。」

「オゥ…」

「いやどういう反応?」

…中学校までは眼鏡かけてたし、表情について言われたこと、無かったなぁ。

そんなことをぼんやり考えていると、

「茜ー?どしたー?そんなに寂しいかー?」

と凪。

「うわー、寂しいなぁ涙涙涙」

と泣き真似で返す。

「うわっ、泣き真似!
…ま、明日も会えるしな。」

「あははっ、確かに!」

「じゃ、また明日!」

「うん、バイバーイ!」

段々と離れていく背中を見ていたら寂しさが込み上げてきて、でもこの寂しさが新鮮で。

勇気を出して、頑張って、この学校に来てよかったなぁ、なんて1日目にして思ってしまう。

…さて、帰ろう。

凪と反対方向に向かって歩き出す。

「うおっ」

「きゃっ」

…初日から人とぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさい…!私全然前見てなくって…!」