「り、理仁さん」
「ん?」
「あの……」
「ああ、悪ぃな」
「いえ……」

 西条からだいぶ離れた場所までやって来た二人。その間ずっと握られていた手に戸惑っていた真彩が声を掛けると、今まで手を握っていた事に気付いた理仁が謝りながら離す。

「アイツはどうしようもねぇ女好きでな、好みの女を見つけると毎回ああなんだ。けどまぁ、もう寄って来ねぇと思うから安心しろ」
「そうなんですね。テレビや雑誌なんかで見た事はありましたけど、もっと紳士的な方かと思ってました」
「見た目だけはな。実際は女好きの金持ち糞ジジイってとこだ」
「ふふ、言い方が……」
「ようやく笑ったな」
「え?」
「やっぱり、お前はそうして笑ってる方が良い」
「!!」

 思いがけない理仁の言葉にようやく落ち着き掛けていた真彩の鼓動は再び高鳴り、速まっていく。

「やあ、鬼龍くんじゃないか」
「お久しぶりです……真彩、ちょっと行ってくる。飲み物でも飲んでその辺で待っててくれ」
「あ、はい……分かりました」

 そんな中、パーティー参加者に声を掛けられた理仁は真彩に断りを入れて知り合いの元へ向かって行った。

(……あんな事、急に言われたら……ドキドキしちゃうよ……)

 一人になった真彩は未だ鳴り止まない鼓動を鎮める為、飲み物でも飲んで落ち着けようと飲み物を取りに行く。

 赤ワインの入ったグラスを手に、理仁が見える位置の邪魔にならない場所で待っていた真彩。理仁は顔が広いようで、ひっきりなしに参加者たちに声を掛けられていた。