「兄貴、到着しました」
「ご苦労、適当に時間潰しててくれ」
「はい」

 到着したのは国内最高級と評されている超一流のホテル。立地や景色が良く、客室一部屋一部屋がとにかく広い。

 そして階によってコンセプトが変わっているので、リピーターは泊まるたびに階を変えているという。

 政界や芸能界では結婚式などをこのホテルのパーティーホールで行う事が多く、富裕層のみが利用出来るホテルとも呼ばれていて、それ以外の一般市民が利用出来るとすれば、せいぜい二階にあるホテルバイキングくらいだろう。

「ここで開かれるんですか?」
「ああ。主催者はこのホテルのオーナーだからな。毎年パーティーの日はホテル自体貸切になる。客室も今日はパーティー関係者しか泊まれねぇんだ」
「そうなんですね。そういえば、ここのパーティーに参加した後も別のパーティーの予定があるんでしたよね?」
「ああ。だからここではあまり飲み食いしねぇ方がいい。ここはあくまでも顔を出す程度だからな」
「分かりました」

 表情にこそ出さないけれど、真彩は先程以上に緊張していた。それもその筈、普通に生活しているだけではこの様な高級ホテルで開かれるパーティーになど参加出来る事などないのだから。

「それと、なるべく俺から離れるな。こういうパーティーにも少なからず不逞な輩はいるから」
「はい」
「万が一俺が居ねぇ時にしつこい奴に声を掛けられたら適当にかわして離れろ。いいな」
「分かりました」

 最上階にある会場へ辿り着くと、既に沢山の参加者たちが各々パーティーを楽しんでいた。