「今日は貸し切りにした。これから服やアクセサリーなんかも此処へ届けてもらうよう手配してある」
「え?」

 全く状況が見えない真彩はただ戸惑うばかり。そんな彼女をよそに理仁が店内へ足を踏み入れると、

「鬼龍様、お待ちしておりました。お連れ様、どうぞこちらへ」

 店内に控えていた美容師たちが一斉に出迎え、真彩を席へ案内する。

「理仁さん……」
「少々手荒な真似かもしれねぇが、お前はこれくらいしねぇと自分の事は全て後回しにするだろ? 今は悠真の事を忘れて、自分が楽しむ事を考えろ。いいな?」

 理仁は真彩が自分については全て後回しにする事、物欲が無さ過ぎる事を気に病んでいた。

 そこで、少々強引だが美容院を手配してヘアスタイル、メイクなどを整え、更には多方面に展開する自らの事業を駆使して服や靴、アクセサリーなどを揃えて真彩を綺麗に着飾ろうという考えなのだ。

 そんな理仁の意図を何となく理解した真彩は戸惑いながらも、こうなってしまった以上素直に従うしかない事を分かっているので、

「ありがとう、ございます……」

 申し訳無さ過ぎるという思いを胸に抱きつつも、全てを任せる事に決めた。