「朔、悪いが先に戻って悠真を頼む。翔は電話をしたら迎えに来てくれ」

 驚いている真彩をよそに翔太郎と朔太郎に指示を出した理仁は次に悠真に声を掛けた。

「悠真、お前はこのまま朔と家に戻って買った玩具で遊んでてくれるか?」
「ママは?」
「ママは少し寄るところがある。分かってくれるな?」

 真彩とまた別れる事になると知った悠真は少し悲しげな表情を浮かべるも泣きはせず、

「わかった。さくとおもちゃであそぶ」

 くまのぬいぐるみを強く抱きしめながら『分かった』と納得して頷いた。

「良い子だ」

 そんな悠真の頭を優しく撫でた理仁。その光景を見た真彩の胸の奥は、言葉に出来ない暖かさでいっぱいになる。

「それじゃあ朔、悠真を頼むぞ」
「了解ッス!」
「真彩、行くぞ」
「は、はい! 朔太郎くん、悠真をよろしくね」
「悠真の事は気にせず、姉さんは楽しんでください!」
「ママ、ゆうまいいこにする!」
「うん、ありがとう。行ってくるね」

 皆に見送られながら理仁と真彩は繁華街へと向かって行く。

「あの、理仁さん……一体何処へ……」
「付いてくれば分かる。もうすぐだ」

 真彩が行き先を問い掛けてもそれに答えることはせず、付いてくれば分かるとだけ言う理仁に黙って付いて行くと、

「ここだ」
「ここって……」

 辿り着いたのは【KIRYU】グループの一つで腕の良い美容師が揃っていて常に予約でいっぱいと話題の美容室だった。