「これで、朔の物を取られなくて済みそうだな」
「ちょっ! 理仁さん! あの事は蒸し返さないで下さいよぉ……」
「事実を述べただけだ」
「朔太郎、見られて困る物は全て捨てろ。それが一番だ」
「いやいや兄貴、あれは男のバイブルだから! 捨てるとか無理だし!」
「ばいふるって、なあに?」
「悠真は知らなくていいの! あーほら、絵本読んでやるから車乗るぞ」
「わーい!」

 周りから見れば理仁たち三人は威圧感があって近寄り難い存在で、そんな中にいる真彩や悠真も同じように見られてしまうかもしれないけれど、今の五人はとても楽しそうで普通の家族の団欒風景のようにも見える。

 そんな温かくてどこかむず痒い、今まで感じて来なかった空気を肌で感じていた理仁。

 たまにはこういう空気も悪くないと思いつつも、どうしても気になりこのままでは気の済まない事が一つあった。

 車に乗る間際、何処かに電話をした理仁はそれを終えると助手席に座って運転席に座る翔太郎に何やら小声で話をする。

 それを聞いた翔太郎は黙って頷くと、そのまま車を走らせた。


「兄貴、着きました」
「真彩、降りるぞ」
「え?」

 ショッピングモールを出て約二十分、繁華街近くに辿り着くと人気の少ない裏道に車を停めた翔太郎。何やら理仁はこの辺りに用があるらしいのだが降りる際、真彩にも降りるよう声を掛けた。

 てっきり屋敷に戻ると思っていた真彩は状況が掴めず、降りるのを躊躇っていた。