「えっと……何か?」

 強引なその行動に驚いた真彩は立ち止まり、何か失礼な事をしてしまったのではと恐る恐る尋ねてみる。

「……お前、そいつの紹介で働くんか?」

 けれど、思いもしない言葉が返ってきた事で真彩は思わず首を傾げた。

「……え……?」
「それだよ、それ。お前が持ってる名刺、スカウトマンのだろ?」

 話が見えていない真彩に気付いた金髪の男は、彼女が手にしている名刺を指差しながら再度問い掛ける。

「あ、はい……仕事を探しているので……。それじゃあ、失礼します」

 名刺の話だと分かった真彩は質問に素直に答えて再びその場を去ろうとするも、

「そいつはやめた方がいい。キャバクラ紹介するとか上手い事言って、最後は風俗に連れて行くから」
「……え?」

 去り際に後ろから掛けられた言葉が気になった真彩は足を止めて、再び金髪男に向き直った。

「……それ、本当ですか?」
「ああ、間違いない」
「……そう、ですか……。教えてくれてありがとうございます」

 騙されるのを未然に防げたのだから喜ぶのが当然の反応だと思うのだが真彩の反応は寧ろ逆で、金髪男はその反応が酷く気になったのだろう。

「何で浮かない顔をするんだ? そんなにキャバクラで働きたいのか?」

 理由を知りたくなった男は再度真彩に問い掛ける。

「いえ、違うんです。別にキャバクラで働きたい訳ではなくて……その、お給料が良くて住み込みか寮が完備されている場所を探していて……そんな条件が揃うのは水商売かなと思っただけなんです」

 真彩が夜の店で働きたい理由を知った男は何やら考えるように黙り込み、

「……そうか、それなら俺が仕事を紹介する。どうだ?」

 少し考えた後、自分が仕事を紹介すると言い出した。