「それより、これから出掛けるから車を出してくれ」
「了解ッス!」

 理仁に言われた朔太郎は返事をすると、早々にその場を後にする。

「真彩、悠真、出掛けるから支度をしろ」
「私たちも、ですか?」
「ああ。今日は仕事じゃない。お前たちの買い物だ。遅くなったが、必要な物を買い揃えよう」
「そんな、今ある物で十分です! 家具や家電などはお屋敷にある物を使わせてもらってますし……」
「そうもいかねぇだろ? 服だってそう数はねぇだろうし、それに、悠真には遊び道具が必要なんじゃねぇか?」
「そ、それは……」
「悠真、玩具欲しくないか?」

 理仁は真彩の横に立つ悠真に向かうと、屈んで話し掛ける。

「おもちゃ、ほしい」
「なら出かけた時に買ってやるからな」
「ほんと?」
「ああ」
「わーい!」

 理仁の事はまだ慣れていないのか、近寄ると少し萎縮する悠真だが、オモチャを買ってもらえると分かると笑顔を見せ、理仁の前という事も忘れて喜び始めた。

「ゆ、悠真……」
「真彩、早く準備して来い。車で待ってる」
「すみません、ありがとうございます。すぐに支度をして行きます。悠真、準備するよ」
「はーい!」

 申し訳ないと困り顔の真彩だったが悠真の喜ぶ様子を見ると断る事が出来ず、理仁の厚意を素直に受けてお礼を口にした後、支度を整える為に悠真を連れて一旦自室へ戻って行った。