「悠真、朔太郎くんの物を勝手に持ち出しちゃ駄目よ? 今すぐ返しなさい!」
「いーや!」
「こら、悠真!」
「あぁ、姉さん! ここは俺が! なぁ悠真、お願いだから勘弁してくれって」

 言う事を聞かない悠真を叱り力づくで朔太郎の物を取り返そうとするも、それはどうしても見られたく無い物のようで自分が取り返すと悠真に詰め寄る朔太郎。

「これ、ゆうまの! さくからもらったの!」

 何が気に入ったのか、どうしても返したくない悠真は真彩と朔太郎の間をすり抜け再び逃げ出し駆けていくけれど、

「おっと、走ると危ねぇぞ。悠真、一体何持ってんだ?」

 騒ぎを聞き付けたのか、たまたま廊下に出て来ただけなのか理仁が現れ、ぶつかりそうになった悠真を支えて止めた。

「あぁ! 理仁さん、それは――」

 悠真が大切そうに持っていたそれはぶつかりそうになった弾みで床に落ち、理仁がそれを拾いあげると朔太郎が悲痛にも似た声を上げた。

「…………はぁ」

 理仁は拾いあげたそれを目にすると呆れた表情と共に溜め息を吐き、

「朔、お前の趣味をとやかく言うつもりはねぇが、これは明らかに子供(ガキ)に見せるようなモンじゃねぇよな? 万が一、悠真が自分でプレイヤーに入れて目にしたらどうするつもりだ? 教育にも悪いだろうが。入れ物変えたくらいで気を抜くな。こういうのは手が届かない所にしまっておけ」

 鋭い目付きで睨みつけながら静かに言い放つ。

「すいません……気を付けます」

 怒られ、ガックリ肩を落とした朔太郎。一体悠真が手にしていた物は何だったのか、状況から何となく理解した真彩は苦笑いをするだけだった。