(……入りづらいな)

 怒られる事は仕方ないにしても、やはり合わせる顔がないと思っている真彩はなかなか声を掛けられず、部屋の外で数分留まり続けていたのだが、

「真彩、いい加減入って来い」
「は、はい! 失礼します!」

 理仁は初めから気付いていたようで、なかなか入って来ない真彩に痺れを切らし、声を掛けて入るよう促した。

「……あの……」
「立ち話もなんだから、そこに座れ」
「は、はい……失礼します」

 PC机に向かったままの理仁が真彩にソファーへ座るよう声を掛けると、話始めようとしていた彼女は素直に従い腰を下ろす。

 面と向かってだと話しづらいだろうという彼なりの配慮で振り返る事無くPCに向かったままなのだが、それを怒っていると勘違いした真彩は俯いたまま黙り込んでしまう。

 五分程は無言のままだっただろう。一向に話し始めない真彩に代わって理仁が口を開いた。

「今日は、大変だったらしいな。朔から聞いた」
「あの、本当に――」
「謝罪はしなくていい。あれはお前が悪い訳じゃねぇんだから」
「でも……」
「やはり初めに説明はしておくべきだった。これは俺の落ち度だ。済まなかったな、怖い目に遭わせちまって」
「……!」

 理仁の言葉に、真彩は面を食らう。怒られると思っていたのに怒られるどころか自分のせいだと謝罪し、身を案じてくれたのだから。