「ママぁ……」
「悠真、遅くなってごめんね」
「うわぁーん……」

 屋敷に戻ると、悠真の泣き声が外まで響いていた。

 それもそのはず、二人が出掛けたのが昼過ぎだったのに、今はもう陽も落ちて薄暗くなった夕方なのだから。

「翔太郎くん、大変だったでしょう? 本当にごめんね」
「いえ」
「朔太郎くん、悪いんだけど悠真の事お願い出来るかな?」

 いつもなら当たり前のように悠真の面倒を見てもらう事を頼む真彩だけど、先程の空気もあって頼みづらいのか様子を窺いながらやんわりお願いすると、

「勿論、俺の仕事ッスからね。ほら悠真、男なんだからいつまでも泣くなって。な?」

 いつもの様に笑顔を浮かべ、優しげな表情で悠真に接していた。

「ありがとう、よろしくね」

 それを見た真彩も安堵し、早々に夕食の準備へ取り掛かるのだった。


「真彩、話がある。悠真が寝たら俺の部屋に来い」

 夕食を終えて悠真を寝かせる準備を整えていると、部屋の外から理仁の声が聞こえてくる。話というのは恐らく昼間の出来事だろう。

「分かりました」

 騒ぎを起こしたのだから怒られる事は覚悟していたはずの真彩だけど、朔太郎に聞いた話を思い出すと更に気が重くなる。

 自分や悠真を思い同行者を付けて危険が無いようにしてくれていたのに、自ら危険を呼び込む状態を作ってしまったのだから正直理仁に合わせる顔がないのだ。

 複雑な心境の中、ようやく悠真が眠ったので静かに部屋を出た真彩は理仁の部屋の前までやって来た。