「姉さん、どうしていつも買い出しに俺らが同行してるか、分かりますか?」
「それは、荷物も多いし、危険な事があるかもしれないから?」
「そうッス。これは姉さんに余計な心配をかけないよう理仁さんに言うなって言われてた事なんですけど、俺ら鬼龍組は姉さんが思ってる以上に色んな組の人間から恨まれたりしてるんで、危険は日常茶飯事なんスよ」
「そう、なの……?」
「理仁さんは頭が良くてとにかく経営向きで、気付けば国内の企業を大きくして、今じゃ世間に知らない人がいないくらいの大企業の経営者になった。けど、理仁さんは表に立てる人間じゃないからって経営者としての名は伏せて他の人に任せてるけど界隈で知らない人はいない。そして鬼龍組としては金の取り立てとか大きい声じゃ言えないような取り引きをやってるから、妬み恨み様々、多方面から目を付けられて狙われる事は日常的なんだ」
「…………」
「勿論、組員である俺たちも何時どこで狙われるか分からねぇから気が抜けない。俺や兄貴はその事を姉さんにも話すべきだって言ったけど、理仁さんは頑なにそれを拒んだんだ」
「……どうして……」
「聞いたら姉さんや悠真がのびのびと生活出来ないだろうし、屋敷から出る事を躊躇わせても可哀想だからって。それなんで姉さんや悠真が外へ出る時は、例え敷地内でも必ず誰かが同行するように言い付けられてるんっス」
「そう……だったの……」

 話を聞いた真彩は、考えている以上に危険な世界なんだと改めて知った。

「これからは、気を付けるよ」
「はい。絶対、一人で行動するのだけは控えてください。一人になる際は俺ら同行者の目の届く範囲でお願いするッス」
「うん、そうするね」

 先程より重い空気は無くなったものの、いつもの様に楽しく会話が出来る状態でもない車内に会話は無く、ラジオから流れる曲だけが響いていた。