「姉さんは早く店に逃げて!」
「で、でも……」
「俺は平気だから早く!!」
「わ、分かった!」

 これ以上自分がこの場に留まっていては朔太郎の足でまといになると察した真彩は、後ろ髪引かれる思いで人の多い店の入口へと駆けて行く。

(朔太郎くん……無事でいて!!)

 それから数分後、店側が呼んだらしい警察官がやって来て相手の男たちは連れて行かれ、真彩と朔太郎も軽く聴取を受ける事になった。


「朔太郎くん、本当にごめんね」
「いや、大した事ないんで、謝らないでください」

 聴取を終えて帰宅途中の車内で、真彩は自分のせいで大きな騒ぎになってしまった事を悔いて朔太郎に謝り続けた。

「だって、私が一人で行動しなければこんな事にはならなかったのに……」
「……まぁ確かに、それはそうッスね」

 いつもの朔太郎なら真彩を責めるような言葉は絶対に言わないのだけど、何か思う事があるのか少々素っ気ない。

「本当に……ごめんなさい」

 真彩もそれを感じ取っているのだろう。もう一度謝罪の言葉を口にした後は黙り込んでしまい、車内には居心地の悪い空気が流れていく。

 しかし、それを破ったのは朔太郎だった。