(もう、駄目……)

 捕まる事を覚悟していた真彩だったのだけど、

「テメェら、女相手に何やってんだよ!」

 すんでのところで朔太郎が現れ、真彩を背に庇って相手の男たちを睨みつけた。

「朔太郎……くん」
「姉さん、怪我はないっスか?」
「う、うん……」
「間に合って良かった」
「ごめんね……」
「いいッスよ」

 真彩が連れて行かれた際、数人の目撃者がいた事、その客たちが店員に伝えていた事で店長が警察を呼ぼうとしていた所に朔太郎が通りがかり、話を聞いてすぐに駆けつけ今に至る。

 朔太郎は真彩の無事を確認して安堵の息を漏らすと再び相手の男たちに向き直る。

「おめェら猿渡(さわたり)組の奴らだな? この前の事、全然懲りてねぇみてぇだなぁ? この事は組長に報告させてもらう。覚えておけよ」

 どうやら相手の猿渡組というのは鬼龍組より格下で以前にも何か問題があったようで、朔太郎の言葉に相手の男たちは焦りの色を浮かべていた。

「うっせェんだよ! 小僧が調子に乗りやがって!!」

 けれど、ここまで来たら後には引けないのか、二人の内の一人がズボンの右ポケットから折りたたみ式のナイフを取り出すと、朔太郎と真彩目掛けて襲いかかっていく。

「姉さん、離れろっ!!」
「きゃあっ!!」

 咄嗟に朔太郎は背に庇っていた真彩を後ろに押し出し、すぐ側にあった鉄パイプような物を手に取ってナイフの刃を受け止めた。