「よし、そろそろ帰らないと悠真が起きちゃうかもしれないッスね」
「そうだね。泣き出すと見てくれてる翔太郎くんも困っちゃうだろうから早く戻らないと」
「――と、すみません、電話掛かって来たんで先に車乗っててください!」
「うん、分かった」

 荷物をトランクにしまい車に乗り込もとしていた朔太郎のスマホの着信音が鳴り響く。

 真彩に先に車に乗るよう言った朔太郎は電話に出ながらドアを閉めると、車から少し離れた場所で電話の相手と会話をする。

(聞かれちゃまずい話……なのかな)

 状況からそう判断した真彩は買い物をして貰ったレシートを眺めていると、買い忘れがあった事に気付いた。

(どうしよう……朔太郎くんはまだかかりそうだな)

 窓から朔太郎を見ると電話の相手と揉めているのか、険しい表情を浮かべている。

(ササッと行って買ってきちゃおうかな)

 まだ時間が掛かるのならば待っている間に買って来る方が効率良いと判断した真彩。

 バッグから小さなメモ帳を取り出し、【買い忘れがあったから買いに行ってきます】という書置きを運転席の分かりやすい場所に置いて車を後にした。

 それから数分が経ち、

「すみません姉さん、お待たせしました!」

 後部座席に乗っているはずの真彩に声をかけながら車に乗り込んだ朔太郎だったが、

「姉さん?」

 真彩が居ない事に気付くと彼の顔は一気に青ざめていき、探しに行く為車を降りようとすると真彩の残した書置きに気づいた。

「ったく! 危機感足りなさ過ぎだって!」

 そして、いつになく焦りの色を浮かべた朔太郎はすぐさま車を降りてスーパーへと向かって行った。