いつもならば布団の中で少し会話を交わして眠りに就くのだけど、今日は互いに気持ちが昂っていた。

 何度か触れ合う程度の事はしていたのだけど、正式に籍を入れるまではどこか一線引いてしまっていた二人。

 それも今日が最後だと思うと、互いに触れたい欲求が押し寄せていた。

「……真彩、本当に後悔はないのか?」
「後悔?」
「明日、届けを出せばお前は鬼龍組組長の妻になるんだぞ。それは、今までよりも危険が高まる事にもなる」
「勿論分かっていますよ」
「怖くねぇのか?」
「怖くないかと聞かれれば、不安もあるし、怖さもあります。けど、理仁さんが守ってくれると信じているから、私は大丈夫です」
「……そうか。それなら俺は、その期待を裏切らねぇようにするだけだ。何があっても、お前と悠真は守り抜く、この先もずっと」
「はい、信じています。だけど、私も守られてばかりじゃなくて、強くなりますね。だって、理仁さんの妻になるんですから、しっかりしなきゃ」
「頼もしいよ、本当に」

 互いの存在が大切で愛おしくて、もっともっと温もりを感じたくなった二人は見つめ合い、唇を重ね合わせた。

 軽く触れる程度のキスをした後、理仁は愛おしそうに真彩を見つめると額にキスを落とし、それだけでは終わる事が出来ず首筋、耳朶と場所が変わる度、

「ん……、ぁ……」

 と真彩が小さく声を上げる。

 その声は理仁の気持ちを更に昂らせてしまい、そんな理仁の気持ちに応えるかのように真彩は微笑み、彼の背に手を回して自分の気持ちが同じであると伝えたのだ。

 それを合図に再び唇を重ね合わせた二人は、何度か角度を変えながら互いを貪るような激しいキスへと変わっていく。

 何も考えられないくらいに幸せで、互いの気持ちが重なり合う。

 こんな幸せな時間がこれからもずっと続きます様にと願いながら、カーテンの隙間から覗く月明かりに照らされた二人は時間の許す限り、愛を確かめ合った。