「りひとが、ゆうまのパパ?」

 理仁の問い掛けに驚いたのか、急に黙ってしまった悠真を見て、やっぱり自分が父親というのは無理なのかと理仁が落ち込み掛けた、その時、

「……パパって……いっていいの?」

 満面の笑みを浮かべた悠真が『パパ』と呼んでいいか、嬉しそうに尋ねていた。

 これには理仁は勿論、真彩も予想外だったようで悠真の喜びように驚きつつも安堵した。

「ああ、悠真の好きに呼んでいいぞ」
「わーい! ゆうまもパパとおでかけできた! うれしいな!」
「良かったね、悠真」
「うん! うれしい! だって、ゆうまね、ずっとりひとがパパだったらいいなっておもってたから!」
「そうなの?」
「うん!」
「そうか……それは、嬉しいな」
「良かったですね、理仁さん」
「ああ、本当に良かった」

 まだ婚姻届は出していないものの、傍から見た三人は幸せそうな親子そのものだった。


 その夜、悠真を朔太郎にお願いして既に貰って来ていた婚姻届に記入をしていた真彩と理仁。

 お互い人生で結婚をする事がないと思っていただけに、記入を終えても尚、これを提出すれば夫婦になるという状況が信じられない様子だった。

「明日、時間を作って提出しに行こう」
「はい」
「その後は指輪を買いに行くか」
「いいんですか?」
「当たり前だろう。お前の好きな物を選ぶと良い。値段は気にしなくていいから、妥協しないで欲しいものを選ぶんだぞ」
「はい、お言葉に甘えて、選ばせてもらいますね」
「さてと、今日はもう寝るか」
「……そうですね」

 恋人同士になって以来、朔太郎に悠真を預ける日は理仁の部屋で夜を過ごしていた真彩は寝る準備を整えて理仁の待つ布団へと潜り込んだ。