(組長……やっぱりそうだった。どうしよう……仕事を引き受ければ、私も極道の世界に足を踏み入れた事になって危険な目に遭うかもしれない……それに、何よりも悠真に何かあったら……)

 真彩は自分だけなら迷う事はなかった。好条件に危険が付きものだという事は理解出来るから。

 ただ、命よりも大切な悠真にもしもの事があったりしたらと思うと、すぐに決断する事が出来なかった。

 勿論理仁はその事も理解(わか)っているからこそ、真彩を試すように話をしているのだ。安易に決断して何かあった時に後悔させない為に。

「危険は避けられない事もあるが、もしお前と悠真がここに住む事を決めるなら一つだけ確実に約束出来る事がある」
「確実に、約束出来る事……?」
「――お前と悠真の命は、俺の命に代えても必ず守り切るって事をな」

 多少怖さもあるが顔立ちが良く、頭も切れて子供を思いやる気持ちも持っている理仁に真剣な眼差しで『命に代えても守る』と言われて、ときめかない女はいないだろう。

 不安な気持ちを全て拭い去る事は出来ない真彩だったけれど、自分がこの世で一番大切にしているモノを守ると言ってくれた理仁を信じてみようという思いが勝り、

「……これから、よろしくお願いします」

 屋敷で働く事を正式に決断したのだった。