「そうだったんですね、それなら色々と納得です」
「そうか? それならいいが」

 理仁の話を聞いた真彩は、それだけの大企業の経営者であれば高い賃金で雇ってくれるのも頷けると思ったのだろう。それに自分が思っていた人とは違うと安堵したようで笑顔を見せる。

 けれど、理仁には解っていた。真彩が自分をどう思っていたのかを。

「まぁ会社を経営はしているが、KIRYUの社長は俺じゃない」
「え……?」
「俺は社長として表に経つ事が出来ねぇから裏方に徹して社長は共同経営者として信頼のおける奴に任せている。お前ならこの意味が分かるよな? 薄々気付いていたんだろ?」
「気付いていたって……」
「俺は、鬼龍組の組長なんだ。」
「!!」

 確かに真彩は理仁がそういう筋の人間なのかもという仮設を立ててはいたものの、実際そうだと断言されてしまうと返す言葉が見つからず何も言えなくなってしまう。

「お前はこれから、鬼龍組の組長である俺の屋敷で生活をする。勿論出来る限り危険が及ばない様に配慮はするつもりだが、多少の危険が伴うのも事実。だから対価として月収は高額なんだ」

 危険が伴うと改めて言葉にされた真彩の表情は一気に凍りついていく。

「怖いか? 今ならまだ辞めてもいい。悠真も居るから危険な場所で暮らす事に躊躇(ためら)いもあるだろう」

 しかし、そうは言われたもののここを出てしまえば真彩に行く宛てなどなく、貯金ほぼ底を尽きかけている現状では仕事を選ぶ余裕すら無い。それに加えて危険は伴うけれどここまでの好条件に出会う事も今後無いだろう。