イチゴ味の飴が大好きな悠真は赤い色をした飴を前にするや否や「……っ……あめ、たべる……」と泣きべそをかきつつも朔太郎の持つ飴を欲しがり手を伸ばしたので、朔太郎は透明の包み紙を剥がして悠真に手渡した。

「丁度いい、朔、お前が悠真の面倒を見ていろ。翔は買い出しに行って来い」

 その光景を見た理仁は朔太郎に悠真の面倒を、翔太郎に買い出しを言いつけて真彩と二人きりの状況を作る事に成功した。

「……すみません、面倒をかけてしまって」
「構わねぇよ。見知らぬ大人が居る中、母親と引き離されるとなって急に不安になったんだろう。無理もねぇさ」
「お気遣い、ありがとうございます」
「それで、俺について知りたい事は何だ? 隠すつもりもねぇから、聞かれれば何でも答えるが」

 何でも答えると口にしている理仁だけど、探られている事にあまり良い気分はしないのだろう。鋭い目つきで問われた真彩は萎縮してしまい少し遠慮がちに問い掛けた。

「えっと……失礼を承知でお聞きします。理仁さんは、何をされている方……なんでしょうか?」
「そうだな、会社経営……とでも言えば聞こえがいいか? 会社の種類は様々だが、どれもきちんとした企業だぞ。【株式会社KIRYU】聞いた事があるだろ?」

 理仁のその言葉に真彩は驚き、大きく目を見開いた。

【株式会社KIRYU】と言えば、飲食店は勿論、IT企業や建設業と様々な業種に名を轟かせていて国内で知らない者はいない大企業の名前なのだから。