「理仁さん、姉さん!」

 惇也との話を終えてから数十分後、理仁からの連絡を受けた朔太郎が公園へとやって来た。

「さく!」

 理仁に促されて悠真と二人で車内に戻った後も真彩はあまり余裕が保てなかったせいか悠真の相手をろくにしてはやれなかった事や、殺気立ったまま惇也と別れて一人車外に出たままの理仁を間近で見ていた悠真は恐怖に加え、孤独と淋しさを感じていたのだろう。朔太郎の姿を見るなり自ら車を降りて彼の元へ一目散に走り出して抱きついた。

「悠真、無事で良かった」
「うわーん……さくぅ……!」

 朔太郎に抱きしめられた悠真はようやく安心できたのか(せき)を切ったように泣き出してしまう。そんな悠真を前にした朔太郎はいつもと同じように来てくれた事に一瞬戸惑うも、理仁や真彩の様子を見て瞬時に状況を察し、悠真の背を優しく叩きながらあやし始めた。

「朔、少し真彩と話があるから、悠真を頼む」
「分かりました。任せてください」
「真彩、それでいいか?」
「…………はい。朔太郎くん、悠真をよろしく」
「了解っス」

 いつも通り朔太郎に悠真を任せた理仁は車に乗り込むと、悲しげな表情を浮かべたままの真彩を乗せて車を走らせていった。