「り、理仁さん……。すみません、探るような真似を……」
「別に構わねぇよ。翔、これから真彩と話がある。先に悠真を部屋に連れて行ってくれ」
「はい。悠真、俺と行こう」

 理仁に言われ、翔太郎が悠真を別室へ連れ出そうとするも、

「やー! ママといっしょがいい!」

 つい今しがたまでご機嫌だった悠真も見知らぬ場所や大人たちを前に急に不安になってしまったのか、真彩に抱きついて離れようとしない。

「悠真、ママは話をしなきゃならないから……少しだけ、このお兄さんと待ってて?」
「いや!」
「本当に少しだけだから」
「いーや! ママとはなれるの、やだぁ……」

 真彩が宥めようとしても聞き入れず、しまいには泣き出しそうになる。

「悠真……」

 若干呆れ顔の翔太郎と理仁を前に真彩が焦りの表情を浮かべていると、

「理仁さん、次は何を――」

 指示を仰ぐ為にやって来た朔太郎がひょっこりと顔を出した。

「ん? どうした、悠真。何でそんな泣きべそかいてんだ?」

 状況を知らない朔太郎は瞳に涙を浮かべた悠真に近寄り問い掛けると、

「ママとちがうおへやにいくの、やなのぉ……」

 朔太郎なら嫌な気持ちを分かってくれると感じたのか、思いを口にしながらとうとう泣き出してしまう。

「す、すみません! すぐに泣き止ませますから!」

 この状況をまずいと思った真彩が更に焦り、何とか悠真を泣き止ませようとするも、一度泣き出した悠真は泣き止む気配が無い。

 何か機嫌を取ろうにもすぐには思いつかない真彩が半ば途方に暮れていると、

「そうだ! なあ悠真、飴食べるか? ほら!」

 朔太郎は何かを思い出したように懐を探ると、棒付きの飴を悠真の前に出して見せた。