「理仁さん……。気持ちは有難いですけど、これは私と惇也の問題ですから……」

 確かに真彩の言う通り、この話は真彩と惇也二人の問題で理仁が口を出す事ではない。

 けれど、今この状況で話をしたところで良い方向に転じる事はないだろう。

 それを察した理仁だからこそ、真彩と惇也を一旦離そうとしているのだ。

「このままここで話をしていても時間の無駄だ。それに、悠真の前で話す事でもないだろ? 俺に任せてお前は戻ってろ。いいな」
「……分かり、ました」

 有無を言わさず車の鍵を手渡した理仁は、半ば強引に真彩に悠真を託して車へ戻るよう促した。

 真彩たちが車に乗り込んだ事を確認した理仁は惇也に向き直ると、考え込んでいた惇也が顔を上げてニヤリと不気味な笑みを浮かべながら口を開いた。

「……聞いたか、鬼龍さんよ。あの子供(ガキ)は俺の血が繋がってるんだとよ」
「ああ、勿論全て分かっている」
「はぁ? 正気かよ? 知ってて傍に置いてるのか?  敵対してる組の男と血が繋がった子供(ガキ)なんだぜ?」
「それが何か問題あるのか?」
「はあ? 大ありだろ!?」
「俺としては、そんなもの何の問題もないが?」

 終始挑発的な態度の惇也を前に冷静で淡々と相手をする理仁だったけれど、惇也の次の言葉を聞いた瞬間、表情が一気に険しいものへと変わっていった。