なんでここにいるの?

 そう言おうとした。

 わたしは亮を忘れるために、ここに来たのに。

 それでも、こんな真夜中に走って来た亮を見て、どこかほっとしてしまう自分がいる。

 神様がわたしにあきらめるなって、言ってるのかも。

 この期に及んで、そんな都合のいいことを考えた。

 そんな自分がいやでここに来たのに。

 おまじないをやろうと思ったのに。

 ……本末転倒だ。

「まりか、あれやったのか!?」

 肩で息を切りながら、亮はすごい剣幕でわたしにつめよった。

 そのただならない様子に、びくびくしてしまう。

「あれ、って」

「あれだよ! 恋まじない!」

 亮の声にハッとして腕時計を見ると、時刻は十二時一分を指していた。