昔は亮のことならなんでもわかったのに、いつの間にかなんにもわからなくなっていた。

 それだけ、一緒にいる時間が減ったということだ。

 わたしのせいでもあるけれど……。

 会話をすることもほとんどなくなっていたいま、突然やってきたこの時間がうれしくて、亮の低い声が優しく耳に馴染む。

 いちいち喜んじゃうのをやめたいって思ったばかりなのに。

 うまくいかないことばっかりだ。

 それに、こんなふうに亮とふたりきりになったって陽菜ちゃんに知られたら厄介だ。

 亮もいまは陽菜ちゃんっていう彼女がいるんだから、もっともっと陽菜ちゃんのことを一番に考えてあげてほしい。

 ……わたしはもちろん傷付くかもしれないけど、早くわたしに亮を諦めさせてほしい。

 そんな思いを全部覆い隠して、「まあ、ね。けど、仲いいのなんてもう、律くらいだよ」とまるで何事もなかったかのように伝えた。

 そう言うと亮はなぜかおもしろくなさそうな顔で「ふーん……」とちいさく呟いた。