わたしはショックのあまり、なにも言えずに立ち尽くした。

 なにも言えないし、考えられない。

 そもそもこの状況が、ありえなさすぎる。

「いまもまりかさんが亮せんぱいを好きなこと、私は知ってます。……でも、いまは私のものなので」

 そう言って陽菜ちゃんは、私に背を向けた。

「私は恋まじないで、たしかに亮せんぱいを手に入れました。なにも奪われなかったし、願いも全部叶ってます。……だからもう、私たちのこと邪魔しないでくださいね」

 そう言って、陽菜ちゃんはこれまでのことが夢だったかのようにいつも通りの笑顔を作って、音楽室へと走って行った。

 今起きたことが信じられなくて、信じたくなくて……。

 だけど、たったひとつ、わかったことがある。

 わたしが好きでいるだけで、邪魔になるのなら。

 叶わない想いなら。

 亮への想いを早くなくさないとって、ただそれだけを思った。