「そこ、どいてくれる?」

 そのとき、聞き覚えのある凛とした声が後ろから聞こえてきて、凪ちゃんと一緒に勢いよく振り向いた。

 思った通り真後ろに立っていたのはやっぱり亮で、その顔は無表情。

 その視線は凪ちゃんの方を向いていて、わたしとは一度も目が合うことはない。

「あっ、志田くん! ごめんごめん、いまどく~!」

 亮に気付いた凪ちゃんはさっきより声のトーンを少しだけ上げて、甘ったるい声でそう言った。

 そうするとちょうど昼休み終了のチャイムが鳴って、そのままの流れで凪ちゃんは自分の席へと戻っていく。

 た、助かった……。

 ふうと、一息つく。