気まずくなって亮を見ると、その顔は残念そうで、赤くもあって、なんとも言いがたい表情だった。
それを見て、弁解しよう、本当のことを言わなきゃって思った。
「亮っ、違うの……! ほんとうは、わたし――!」
言おうと思った。
亮の名前を書いたって。
好きだって。同じだよ、って。
だけど、タイミング悪く鳴り響いたチャイムと日直の号令によって、わたしの言葉は運悪くきれいさっぱりかき消された。
亮はいつも数人の男子たちと騒ぎながら教室を出て行くのに、今日だけは少しだけうつむいて、なにも言わずにたったひとりで教室を出ていった。
普段と違うその様子に周りはざわついたけど、同じくらいわたしの心もざわついていた。
出て行く亮の後ろ姿は寂しそうで、ちいさく見えて。
追いかけて言えばよかったのに、なぜかそのときはできなくて……。
わたしはただ、亮のその後ろ姿を呆然と見送った。