「絶対笑うなよ」

 いまにも泣き出しそうなまりかに、あの時した願いをひとつずつ呟いた。




 まりかの好きな人が俺でありますように

 ずっとまりかの近くにいられますように

 まりかと両想いになれますように
 
 


 独占欲むき出しのこんな願い、絶対引かれるってわかってる。

「……気持ちわりーだろ、さすがに」

 絶対気持ち悪いはずなのに、まりかはぶんぶんと首を横に振るだけだった。

 そんなまりかに、これだけはやっぱり勇気を出さないと聞けなかった。

「……まりか。あの時、俺のこと好きだった?」

 俺のその言葉を聞いたまりかの目からは、ついに涙が一筋零れた。

 静かに頷いたまりかを見て、確信がより強固なものに変わる。

「……俺の願いはやっぱり、あの時叶ってたんだな」

 それを知ると同時に、梨木陽菜のことが頭に浮かぶ。

 まりかが泣き止むまで、吸い込まれそうなほどでかい満月を、ただじっと見上げていた。