「……そんなことより、好きなやついるのかよ」

 こっちも見ずにぶっきらぼうに紡がれた言葉は、ふてくされているようにも聞こえる。

 なんて、わたしに都合よすぎるか。

「……志田には関係なくない?」

 さっきはとっさに、"亮"なんて名前で呼んじゃったけど。

 それが亮に気付かれてなければいい。

 心の中でいまだに名前で呼ぶ、わたしのこの気持ちなんて、ずっと。

 そんなわたしの心の声を知らない亮は、低い声でうなるようにつぶやいた。

「まじないに頼るほど好きなやつがいんのかよ?」

 ……違うよ、亮。

 わたしは亮を忘れたくて、どうしようもできなくて、今日神社に行ったんだよ。

 そうとは言えなくて、わたしは黙ったまま亮についていく。