「工藤くん、おはようございます」

「おはよう」

土曜日になり、待ち合わせの図書館に5分前に着いた時には、既に工藤くんは入り口の横で英単語帳を見ながら待っていた。

黒髪をボサッと無造作に伸ばして、黒縁の眼鏡をかけている工藤くんは、はた目から見ても「勉強一筋」といった感じがする。

「お待たせしてすみません」

「いや、待ってない。単語を覚えていただけだ」

「そうですか」

実は私も、時間があったら見ようと、同じ単語帳を持って来ていた。

(なんだか、同じ空気が流れてる気がする)

ぼんやりと、工藤くんが単語帳をカバンにしまうのを眺めながら考える。

クラスの女子ともあまり打ち解けて話すことができない私だけど、なぜだか工藤くんとは、口にしなくとも考えていることが似ている気がした。

「今日は、今後についての方針やお互いの意見交換をしたいんだけど、いいかな?」

「はい、よろしくお願いします」

「じゃあ談話スペースに行こう」

工藤くんに続いて、図書館の入り口を入ってすぐのテーブルが並ぶエリアに向かった。