「結衣、露天風呂行こうか」

「うん」

林の中にある隠れ家のような建物が、露天風呂になっているらしい。

二人で入り口に向かうと、受付のスタッフからタオルやロッカーキーを受け取る。

「男性はこちら、女性はこちらからお入りください。内湯を通って外に出ると、露天風呂になっています。手前に入浴着が置いてありますので、それを着てから外に出てください。露天風呂は混浴ですので」

…は?と私達は目が点になる。

「え、混浴?ってことは、結衣と一緒に露天風呂に入れるのかな?」

「そういうことに、なる…のよね?」

二人で小声で話しながら、とにかく入ってみようと入り口で別れた。

内湯でシャワーを浴びてから、髪をアップにまとめてクリップで留める。

お湯に浸かって身体を温めていると、壁に小さなドアがあるのに気づいた。

近づいてみると、ガウンのような入浴着が手前の棚に並んでいる。

(これを着たら外に出られるのかな?)

私は1枚手に取って着てみた。

前身頃の内側と外側のそれぞれ、何ヶ所か紐で結び、お湯に入ってもはだけたりしないのを確かめると、思い切ってドアを開ける。

(わあ、きれい)

露天風呂は照明がほとんどなく、星空が広々と見渡せた。

ゆっくりと段差を下りてお湯に浸かる。

人もまばらで、遠くにポツンポツンと見える程度にしかいない。

端まで進み、湯船の縁に両手を載せて景色を見ていると、後ろから「結衣」と声がした。

「工藤くん?」

「うん。やっぱり混浴だったね」

「そうだよね?私、間違って男湯に入ってないよね?」

「あはは!大丈夫。向こうの方にいるのもカップルだから」

「そっか、良かった」

「良かったけど、良くない」

「ん?なんで?」

「だって結衣の色っぽい姿、他の男に見られたら困る」

「いやいや、周りに人いないし。それに照明暗くて、ほとんど何も見えないじゃない」

「見えなくても結衣の色っぽさは分かる」

「ちょっと、もう、変態!」

「なんだとー?」

近づいて来る工藤くんから、私は笑いながら逃げる。

「こら、結衣!」

工藤くんは手を伸ばして、私を後ろから抱きしめた。

「捕まえた」

耳元でささやかれ、私は思わずドキッとする。

お風呂の中というのもあって、身体が一気にのぼせた。

「く、工藤くん。あの、ちょっと…」

離れようとすると、更に強く抱きしめられる。

「結衣、うなじがすごくきれい。ねえ、キ…」

「ダメ!」

私はパッと振り向いて、工藤くんの顔を押し返した。