「よし!じゃあこれにて最後のホームルームは終了。3年1組、解散!」

鷲尾先生の言葉に、みんなは泣き笑いの表情で抱き合う。

「いやーん、寂しい」

「元気でね、また会おうね」

「先生、ぎっくり腰気をつけてね!」

「あはは!ほんとほんと」

名残は尽きず、みんなはそのあとも肩を組んで写真を撮ったり、固いハグを交わしたりと、賑やかに盛り上がっていた。

「結衣」

ふいに聞こえてきた声に、教室のざわめきが一瞬にして消える。

「校門で待ってるから」

注目を浴びながら教室のドアに片手をかけてそう言うと、くるりと踵を返して去って行く工藤くん。

みんなはその後ろ姿を見送ってから、一斉に「きゃー!」と悲鳴を上げた。

「なに?!もう、キュンキュン!」

「結衣、だって。いやーん!樋口さんってば!」

なぜだか私がバシッと背中を叩かれる。

「あの答辞も、すごかったよね」

「うんうん。もう私、映画のワンシーン観てるのかと思っちゃった」

「私もー!愛が溢れてたよね」

周りを囲まれながら、私はうつむいてドギマギする。

「ほら、樋口さん!早く行かないと。待ってるよ?工藤くん」

「そうだよ。私達、送って行ってあげるから」

お、送るとは?と眉を寄せていると、沢田さんが私のカバンを手渡してくれた。

「さ、行くわよ」

ワイワイと取り囲まれながら、私は階段を下りて昇降口から外へ出た。

真っ直ぐ先に、校門の脇に寄りかかって佇んでいる工藤くんの姿が見える。

「樋口さん、ほら!行って」

「え、あ、うん」

なぜか昇降口の扉の陰に身を潜めるみんなに促されて、私は校門へと歩き出す。