そして翌日。
私達は遂に卒業の日を迎えた。

思えば、工藤くんと学校で一緒に過ごした思い出はほとんどない。

だけど確かに、この学校で私達は出逢った。

ここに通っていなければ、私は大好きな工藤くんとは一生知り合えなかっただろう。

そう思うと、センチメンタルな気持ちになる。

私は朝から念入りに髪型を整え、制服をきちんと着て家を出た。

「おはよう!樋口さん」

教室に入ると、胸にコサージュを着けた沢田さんが笑顔で挨拶してくれる。

「おはよう、沢田さん」

「ね、樋口さんも一緒に写真撮ろうよ」

「うん」

私も机に置かれていたコサージュを着けて、沢田さんと写真を撮る。

周りのみんなも賑やかに写真を撮ったり、卒業アルバムにメッセージをもらったりしていた。

髪をきれいに編み込んだり、緩く巻いたりと、今日の女の子はとても華やかだ。

男子も晴れやかな顔で楽しそうに笑い合っている。

「はーい、みんなおはよう」

鷲尾先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。

「いやー、いよいよ卒業か。早いなあ。3年前に入学してきた時は、あんなにあどけなかったみんなが、もう…」

「せんせーい。卒業式に遅れますよ?」

あはは!と笑い声が上がる。

「そりゃいかん。よし、全員揃ってるな。いざ、感動の式典へ!みんな、先生について来いよ!あ、こら。おい!」

みんなはガヤガヤと立ち上がり、先生を追い抜いて体育館へと向かう。

「ほら、先生も早く!」

女子が両側から先生の腕を組んで歩き出す。

「先生、介護されてます?」

男子が冷やかし、みんなで笑いながら階段を下りた。