その日の夜は、お母さんが作ってくれた豪華な夕食とケーキでお祝いしてもらう。

「おめでとう!結衣」

お父さんも、早めに帰宅して一緒に祝ってくれた。

「ありがとう、お父さん」

すると隣の席のお母さんが、にこにこしながら身を乗り出す。

「色々おめでとう!結衣」

ギクッとしていると、お父さんが首をひねった。

「ん?なんだ?色々って」

「あ、それは、その。ほら!明後日卒業式だしね」

私が必死に取り繕うと、お母さんは楽しそうに笑う。

「そっかー、卒業か。寂しくなるね、結衣」

「そ、そうね。友達や先生と別れるのは名残惜しいね」

「まあ、でも、学校で会えなくても、いつでも一緒に出かけられるんだしね。あー、いいな、青春って。羨ましいな」

「そそ、そうですかね?」

お母さんの言葉に私はヒヤヒヤする。

お父さんは、「なんだかよく分かんないけど、とにかくめでたい!」と、ご機嫌でビールを飲んでいた。