(課外活動が続いてるペアって、今どれくらい残ってるんだろう)
ホームルームを終えて昇降口に向かいながら、私はふと考えた。
誰と誰がペアなのかは分からないけれど、以前は少し華やかだった周りの雰囲気が妙に落ち着いている気がする。
机で黙々と問題集に向かっている人も多かった。
(みんなここから先は受験勉強に専念するのかな。私も遅れないようにがんばらないと!)
自分は活動もまだ残っているし、と考えてから、そう言えば…と疑問が湧いてくる。
(私と工藤くん、いつまで活動するんだろう。10月で終えてもいいことになってるから、今続いてる他のペアもそこで終了する人達がほとんどなのかな?工藤くんも、受験勉強のことを考えたら早く活動を終えたいのかも)
うーん、どうなんだろうと思いつつ階段を下りていると、後ろから「樋口!」と呼び止められた。
振り返ると、笠原くんがタタッと階段を下りて来る。
「笠原くん、どうかした?」
「ああ。樋口、ちょっと時間ある?」
「うん、大丈夫だけど」
そう答えると笠原くんは私を、階段の横の人気のない渡り廊下に促した。
「なあに?何か話?」
「うん、まあ」
少し言い淀んでから、笠原くんは思い切ったように顔を上げた。
「樋口、課外活動ってまだ続いてるの?」
「え?うん」
「そうなんだ。でも10月で終わるんだろう?」
「どうかな、分かんない」
「それ以降も続けるってこと?そんなペア、聞いたことないぞ」
そうなの?と私は驚く。
じゃあやっぱり工藤くんもそのつもりなのかな…と考えていると、笠原くんがまた口を開いた。
「樋口、俺とつき合ってくれない?」
考えごとをしていて、すぐには理解できない。
「…え?ごめん、何?」
「だから、俺とつき合って欲しいんだ」
「あ、活動のこと?」
そうか、沢田さんとは別れちゃったんだもんね、と思ってから、あれ?と首をひねる。
「ペアを解消したら、そのあと無理に新しい相手を探さなくてもいいんじゃなかったっけ?」
「そうだけど、その話とは関係ない」
「ん?じゃあどういう話なの?」
「俺、樋口が好きなんだ」
「…は?」
意味が分からない。
いや、意味は分かるけれど意図が分からない。
「好きってどういうこと?私に何か頼みたいの?」
「ええ?なんでそうなるの。普通に、樋口っていいなって思って。彼女になって欲しいんだ」
「は?いったい何をどうしたらそういう考えになるの?私、学校でじっとしてるだけだよ?」
「ええー?難しいこと言うな。人を好きになるのって理屈じゃないだろ?なんか、今まで樋口と席が近かったからさ。授業中の真剣な表情とか、俺にプリント回してくれる時にちょっと笑ってくれたりとか、そういう些細なことが気になってたんだ。今日席替えして樋口と離れちゃって、すごく寂しくなった」
「はあ…。そういうことなら、そのうちまた前の席の子を好きになるんじゃない?えっと、笠原くんの前って誰になったっけ。青山さん?」
いや、だから!と、笠原くんはちょっと苛立ったように手で遮る。
「俺は樋口が好きなんだってば。樋口、課外活動はやめて俺とつき合ってくれない?」
「そんな、相手に聞かずに勝手にやめられないよ」
「じゃあ俺からそいつに話をしてもいいから。誰?活動のペアって」
「俺だけど」
突然聞こえてきた声に、私達は驚いて振り返る。
「く、工藤くん…」
私は驚いて言葉を失う。
久しぶりに見る工藤くんはいつにも増して真剣な表情で、ツカツカと近づいて来ると、いきなりグイッと私の肩を掴んで引き寄せた。
「悪いけど、俺は何を言われても樋口とペアを解消する気はない。じゃあ」
そう言うと私の肩を抱いたまま歩き出す。
「ちょ、ちょっと、工藤くん」
強引に連れて行かれ、屋上へと続く階段の踊り場まで来ると、工藤くんはようやく私から手を離した。
ホームルームを終えて昇降口に向かいながら、私はふと考えた。
誰と誰がペアなのかは分からないけれど、以前は少し華やかだった周りの雰囲気が妙に落ち着いている気がする。
机で黙々と問題集に向かっている人も多かった。
(みんなここから先は受験勉強に専念するのかな。私も遅れないようにがんばらないと!)
自分は活動もまだ残っているし、と考えてから、そう言えば…と疑問が湧いてくる。
(私と工藤くん、いつまで活動するんだろう。10月で終えてもいいことになってるから、今続いてる他のペアもそこで終了する人達がほとんどなのかな?工藤くんも、受験勉強のことを考えたら早く活動を終えたいのかも)
うーん、どうなんだろうと思いつつ階段を下りていると、後ろから「樋口!」と呼び止められた。
振り返ると、笠原くんがタタッと階段を下りて来る。
「笠原くん、どうかした?」
「ああ。樋口、ちょっと時間ある?」
「うん、大丈夫だけど」
そう答えると笠原くんは私を、階段の横の人気のない渡り廊下に促した。
「なあに?何か話?」
「うん、まあ」
少し言い淀んでから、笠原くんは思い切ったように顔を上げた。
「樋口、課外活動ってまだ続いてるの?」
「え?うん」
「そうなんだ。でも10月で終わるんだろう?」
「どうかな、分かんない」
「それ以降も続けるってこと?そんなペア、聞いたことないぞ」
そうなの?と私は驚く。
じゃあやっぱり工藤くんもそのつもりなのかな…と考えていると、笠原くんがまた口を開いた。
「樋口、俺とつき合ってくれない?」
考えごとをしていて、すぐには理解できない。
「…え?ごめん、何?」
「だから、俺とつき合って欲しいんだ」
「あ、活動のこと?」
そうか、沢田さんとは別れちゃったんだもんね、と思ってから、あれ?と首をひねる。
「ペアを解消したら、そのあと無理に新しい相手を探さなくてもいいんじゃなかったっけ?」
「そうだけど、その話とは関係ない」
「ん?じゃあどういう話なの?」
「俺、樋口が好きなんだ」
「…は?」
意味が分からない。
いや、意味は分かるけれど意図が分からない。
「好きってどういうこと?私に何か頼みたいの?」
「ええ?なんでそうなるの。普通に、樋口っていいなって思って。彼女になって欲しいんだ」
「は?いったい何をどうしたらそういう考えになるの?私、学校でじっとしてるだけだよ?」
「ええー?難しいこと言うな。人を好きになるのって理屈じゃないだろ?なんか、今まで樋口と席が近かったからさ。授業中の真剣な表情とか、俺にプリント回してくれる時にちょっと笑ってくれたりとか、そういう些細なことが気になってたんだ。今日席替えして樋口と離れちゃって、すごく寂しくなった」
「はあ…。そういうことなら、そのうちまた前の席の子を好きになるんじゃない?えっと、笠原くんの前って誰になったっけ。青山さん?」
いや、だから!と、笠原くんはちょっと苛立ったように手で遮る。
「俺は樋口が好きなんだってば。樋口、課外活動はやめて俺とつき合ってくれない?」
「そんな、相手に聞かずに勝手にやめられないよ」
「じゃあ俺からそいつに話をしてもいいから。誰?活動のペアって」
「俺だけど」
突然聞こえてきた声に、私達は驚いて振り返る。
「く、工藤くん…」
私は驚いて言葉を失う。
久しぶりに見る工藤くんはいつにも増して真剣な表情で、ツカツカと近づいて来ると、いきなりグイッと私の肩を掴んで引き寄せた。
「悪いけど、俺は何を言われても樋口とペアを解消する気はない。じゃあ」
そう言うと私の肩を抱いたまま歩き出す。
「ちょ、ちょっと、工藤くん」
強引に連れて行かれ、屋上へと続く階段の踊り場まで来ると、工藤くんはようやく私から手を離した。